研究概要 |
本研究の目的は、温度可変内部転換電子メスバウアー分光用スペクトロメーターを用いて、ウスタイト(【F_(e1-x)】O)、マグネタイト(【F_(e3)】【O_4】)の鉄酸化物や弗化鉄(Fe【F_2】)の単結晶薄膜を作製し、表面磁化とバルク磁化の温度依存性の違いを内部磁場の測定から明確にして表面スピン波の研究を行うことであった。鉄酸化物薄膜をサファイア基板上に作製し、その作製状態をスペクトロメーターよりもエネルギー分解能は悪いが高感度である内部転換電子メスバウアー分光用比例計数管で調べた。これにより、酸素分圧を調節できる、【CO_2】、【H_2】の混合系を接続した電気炉を使用した場合、酸素分圧を【10^(-16.5)】atmにして、6.5hr酸化させると【F_(e1-x)】Oが作製されることが判明した。しかし、この場合でも【F_(e1-x)】O単独の試料は得られず、常に【F_(e3)】【O_4】【F_(e1-x)】O及びα-Feから成りたっている。この鉄酸化薄膜について、温度可変内部転換電子メスバウアー分光用スペクトロメーターを用いて、エネルギー及び温度を変えながら、そのメスバウアースペクトルを測定した。購入できたメスバウアー線源が弱く、まだ統計が足りないので解析上問題点が多々残っているデーターしか得られなかったが、これらのスペクトルから次の点が明らかになった。 1)試料は表面から奥へ順に【F_(e3)】【O_4】,【F_(e1-x)】O,α-【F_e】の三層構造よりできている。2)【F_(e1-x)】Oの転移点は、178Kから206Kの間にあること及び156K以下ではほとんど【F_(e3)】【O_4】とスペクトルが重なってしまうこと。3)7.3keVの表面部分では78Kにおいて【F_(e3)】【O_4】の内部磁場の大きい部分が見えている。 今後は、【F_(e3)】【O_4】について、強い線源を用いて統計のよいデータを取り、表面での内部磁場の大きくなる部分を詳細に調べた後、改めて【F_(e1-x)】Oを別途作製し、測定を試みようと考えている。
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