研究概要 |
本研究では, 遍歴電子モデルの立場に立ち, いくつかの代表的なウラン化合物の電子エネルギー・バンド構造を計算し, その計算結果に基いていろいろな実験結果を解釈することを試みた. また, 比較のために, いろいろなセリウム化合物における4fバンドを計算した. 一電子ポテンシャルは, 密度汎関数法に基ずき, 局所密度近似の範囲内で交換・相関相互作用を考慮に入れて構成し, バンド計算は, スピンー軌道相互作用を含めた相対論的APW法を用いて行った. ウランの5f電子はいろいろな化合物において, 他原子の電子状態と混合し, その混合の性質に応じて, 通常金属から重い電子系にいたるまで多様な系を形成する. 比較的軽い元素とウランから成る, AuCu_3型結晶構造の化合物USi_3やUGe_3に対しては, UIr_3やURh_3の場合と同じように, バンド計算によるフェルミ準位における状態密度は低温電子比熱係数から導かれる実験値と定量的に良く一致し, またフェルミ面は観測されたド・ハース・ヴァン・アルフェン効果を良く説明する. 理論と実験の一致は, 3d遷移金属に対して得られたものと同程度に良い. しかし, USn_3やUPb_3に対しては, 定量的に良い一致は得られなかった. 典型的な価数揺動系と考えられているCeSn_3においては, USn_3の5f電子と同じように, 4f電子はSnのp状態とよく混合し, フェルミ準位はpバンドの中にあるので, フェルミ準位における状態密度は非常に大きくなることはできない. 従って, 4f電子による異常が大きくないことが定性的に理解される. しかし, CePd_3のフェルミ準位は4fバンドの中の底付近にあり, フェルミ面上の電子状態は殆ど純粋なf成分から成るので, 4fバンドの性質は電気伝導などの物性に直接, 大きい異常として現れる.
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