研究概要 |
希土類およびその化合物は局在した不完全4f殻をフェルミ準位付近に持つため、価数揺動などの物性的に興味深い性質を示す。本研究では希土類3d励起エネルギー領域で入射電子エネルギー依存【Mq_5】放射スペクトル、character-istic Isochromatスペクトルおよびcontinuum limitスペクトルを、希土類六ホウ化物について測定し希土類の3d励起状態について知見を得ることを目的とした。また、参考のためにいくつかの希土類化合物の希土類【N_(4,5)】吸収スペクトルをも調べた。得られた結果を以下に要約する。 1.六ホウ化セリウム、六ホウ化ネオジウム(Nd【B_6】)および六ホウ化サマリウムの【M_(4,5)】放射スペクトルでは、放射ピークが吸収ピークと一致し、従って放射ピークは共鳴放射(【3d^9】【4f^(n+1)】→【3d^(10)】【4f^n】,nは基底状態におけるf電子数)として説明できた。価数揺動物質と考えられているSm【B_6】,Ce【B_6】については、【M_(4,5)】放射スペクトルにその可能性は見い出せなかった。 2.上記いずれの物質についても、共鳴放射位置におけるcharacteristicisochromatスペクトルの測定の結果、共鳴放射ピークエネルギーより大きい入射電子エネルギーでスペクトル強度の立上りが観測された。このことから,3d準位の励起threshold近傍のエネルギーを持つ電子の衝激により、その衝突により殆んどエネルギーを失った入射電子と3d殻より励起された電子とが、その電子に捕獲され【3d^7】【4f^(4H2)】励起状態を形成することが推察された。 3.いくつかの希土類六ホウ化物および塩化物の希土類【N_(4,5)】吸収スペクトルを測定した。価数揺動物質と考えられているSm【B_6】のスペクトルは【Sm^(3+)】イオンに関する構造を顕著に示した。これは【Sm^(2+)】イオンに対する4dthresholdより高いエネルギー領域に【Sm^(2+)】イオンに関する吸収構造が現われることから、【Sm^(2+)】イオンのスペクトル構造は自動イオン化により不明瞭になったと考えられる。
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