火山の近傍で発生する地震を一般に火山性地震と呼んでいる。これらの地震が火山活動と関係するか否かの論争は大森房吉以来のものである。この論争解明のためには、種々の面から地震を分類し、その特性を明らかにする必要がある。日本とその近傍で1904年以降の火山体(カルデラを含む)に発生したM6以上の地震を選び出すと11例ある。 1.火山の近傍では、大地震の発生が少いとされていたが、1914年と1922年にM7級の地震が桜島及び雲仙岳の2つの活火山の近くで発生している。 2.超低周波地震(VL)・低周波地震(L)や群発地震(SW)など通常発生する地震と較べて異質のものが多く、火山体の構造と密接に関係する。また、マルチプルショク・顕著な前震を伴う・双発型など変り種が多い。 3.群発地震の発生域は火山地域と重複する例が非常に多い。このことは木均質媒質(火山体と対応できる)中での破壊現象と理解できる。しかし 噴火の前兆となった地震は意外に少く、1961年以降 火山体で発生した群発地震は13例あり、このうち噴火の前兆となった群発地震は1962年の十勝岳と1977年の有珠山噴火の2例に過ぎない。マグマの貫入とみられる発震機構を示す群発地震ではM6以上には見当たらない。 4.超低周波地震(VL)は5例あり、M7級も2例含まれる。宇津は1904年〜1979年に発生した日本付近のM6以上の浅発地震807個について、マグニチュードと有感半径との関係から、地震をN(普通の地震)506個・VL34個、L205個に分類し個数を出している。V及びVLに分類される地震は、有感域が狭く長周期の波動が卓越した地震である。VL型34個の大部分は海底に震源を持つが、内陸の5個はすべて火山体に発生したM6級以上の地震であることは興味深く、火山体の地質構造と密接な関係をもち、火山体近傍での緩慢な断層運動と理解される。
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