電気ゾンデとして降水粒子の電荷と雲内の大気電位傾度の二要素を交互に時分割で測定して送信するものを製作した。これをレーダにて予め到来時を予測した降雪雲に合わせて飛揚し、それを自動追尾するラジオゾンデ受信機の空中線制御の方位角に合わせてレーダの縦断面の走査をしながら追跡した。得られた観測結果の7例中6例について、降雪雲の下部半分や雲底近くは正の電位傾度であるのに対して、上半分や雲頂近くでは、逆に負の電位傾度であることが共通していた。このことは降雪雲の電気的性質の一つとして特筆すべきことである。例外のケースはレーダエコーから判断して、一連の攪乱の末期のものであったと判断された。 電気ゾンデとレーダの同時観測については、最も条件の良い例から順に詳しく解析してみた。そのレーダのRHI図の縦断面図によるとエコーが尾流雲の形で風のシャーによって進行方向に対して約2/3の勾配で前傾しているのがわかった。これは海上から上陸すると、さらに前傾が進んでいくが、電気ゾンデは幸いに、その尾流の中をつらぬく様に飛航した。その中で雲の下部は正電場で、そこの降水粒子の電荷の負が卓越していた。また雲の上半分の電場は負で、そこの電荷は正で逆相関である。電場の符号の変り目には空間電荷密度が算出されるので、雲層全体の中層付近は正の空間電荷が存在していることになる。また雲頂近くには負の空間電荷が同様に計算される。 冬の雷は通常の落雷と異って正の電荷が落ちることで注目されている。この研究によって得られた電気的構造によると、その正電荷は雲の中層の空間電荷か、またわ雲の上半分に存在する降水粒子の正電荷のいずれかであるが、それらに対する反対符号の電荷と単に重力分離しているだけでなく風のシヤーによって水平にひきはなされていて、これが大地に対し露出するために正極性落雷になると考えられる。
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