研究概要 |
今年度は昭和60年度に開発した球面上の非線型海洋大循環モデルを用いて熱帯貿易風によるスピン・アップ,スピン・ダウンの過程で作られるI-G渦の研究を行うとともに、準地衡流(Q-G),中間地衡流(I-G),惑星地衡流(P-G)のすべてを包含する一般地衡流方程式を正しい近似法のもとに導出し、その性質を数値的に調べた。この新しい方程式はロスビーの変形半径程度の水平スケールの現象(中規模渦等)から海流の水平大循環までを全体として取り扱えるものである。しかもプリミティブ方程式よりも極めて迅速に数値積分することができるという特質を持つ。特にこの一般地衡流方程式をガルフ・ストリーム(湾流)より切離した冷水渦-ボブーに適用し、その変形と移動をかなり良い近似で再現することができた。これらの成果はIUGG総会(バンクーバー,1987年8月)及び波と不安定に関するシンポジウム(シアトル,1987年8月)において発表すべく準備中である。 I-G力学を包含する一般地衡流方程式の研究が軌道に乗るとともに、古典的な準地衡流(Q-G)力学においても付随的ではあるが重要な成果をあげることができた。すなわち、黒潮の表層流速が長いロスビー波の位相速度を越える範囲で、紀井半島等の障害となる地形によって冷水渦を励起できることが明らかになったのである。この結果はTellusに発表した。さらに、より詳しい二次元モデルを用いた実験もほぼ終了している。 現在、成層構造も解像可能な三次元の海洋大循環モデルを開発中であり、より現実に近い状況で準地衡流の力学の全体像を明らかにしようとしている。
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