研究概要 |
1.昭和60年度に行った交配により得られた子孫の核型分析を行い、次のような結果を得た。 (1)相互転座をヘテロにもつ個体(転座個体、2n=4=1g+【1g^(2g)】+2g+【2g^(1g)】)を母親とし、正常核型の個体(正常個体,2n=4=1g+1g+2g+2g)を花粉親とした交配では、得られた7個体(うち1個体は核型分析以前に枯死)のうち、2個体が転座個体であり、4個体が正常個体であった。また、この相反交雑では、得られた33個体(うち2個体は枯死)のうち、3個体が転座個体であり、28個体が正常個体であった。これらの結果より、転座染色体の一方と正常な染色体の一方からなる配偶子は生殖能力をもたないこと、また、相互転座染色体の両方をもつ花粉と正常な染色体の両方をもつ花粉の間には、受精率の差があることなどが推察できる。 (2)転座個体同士の交配では、わずかに2個体の子孫しか得られなかったが、それらはいずれも転座個体であった。 (3)上記いずれの交配においても、交配に用いた親株の核型以外の核型をもつ子孫は見い出されなかった。このことは、相互転座染色体のゲノムは正常なゲノムと等しいゲノム量であることを示唆している。 2.植物染色体の新しい分染法について検討した結果、分染の良否は染色体標本の良否、すなわち、その作成方法に依存し、G-バンド法による分染は酵素解離-火炎乾燥法が最適であることがわかった。しかし、安定したG-バンドを得る段階には達せず、トリプシン処理の条件(濃度、温度、時間など)について、さらに検討中である。 3.相互転座染色体をホモにもつ個体(2n=4=【1g^(2g)】+【1g^(2g)】+【2g^(1g)】+【2g^(1g)】)を作出すべく、新たな交配を行った。
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