研究概要 |
1.ハプロパップスHaplopappus gracilis(Nutt.)Grayの一保存系統中に見い出された染色体突然変異は, この染色体をヘテロにもつ個体の減数分裂における染色体の対合状態及び体細胞分裂前期染色体の早期凝縮部の解析により, 次端部型の第1染色体の長腕の末端側約2/3と第2染色体の長腕の末端約1/5との相互転座であることがわかった. 2.相互転座染色体をヘテロにもつ個体の花粉母細胞の減数分裂第一中期において, 観察した四価染色体のごく一部に動原体の機能が正常に発現されないもの(noncoorientation of centromeres)があることがわかった. このような現象はこれまでにライムギなど数種類の植物で観察されているが, その機構については不明な点が多く, 今後より詳細な解析を行う必要がある. 3.相互転座染色体の子孫への伝達性を調べるために, 相互転座染色体をヘテロにもつ個体×正常な染色体をホモにもつ個体及び相互転座染色体をヘテロにもつ個体同士の2種類の人工交配を行った. その結果, (1)相互転座染色体の一方と正常な染色体の一方からなる配偶子は生殖能力を持たないこと, (2)相互転座染色体の両方を持つ花粉と正常な染色体の両方を持つ花粉の間には受精率の差のあること, (3)相互転座染色体がホモの組み合わせになると致死作用の引き起こされること, などが明らかになった. 4.相互転座染色体の集団中での維持機構については集団を維持するための圃場が確保できなかったため, 実験が行われていない. 今後の課題である.
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