研究概要 |
1.九州西部の25地区の残存孤立自然林を調査した。コケ群落は、長崎周辺・島原半島の6地区において調査を集中的に行った。 2.調査項目は、(1)孤立林全体の高等植物相,(2)自然度の高い部分の群落組成,(3)林間の樹皮上,岩上,土上など種々の立地のコケ群落の組成,(4)林内の人為の種類と強度,(5)孤立林の面積規模。 3.高等植物に関しては、計188種の木本類と常緑草類が記録された。最小の孤立林では、産出種数は29種、最大では114種であった。総種数と林分面積との間には、有意な相関関係が認められた。 4.反復平均法で、高等植物・コケ植物の種の自然度指数を算出した。 5.高等植物は自然度に対応して、【I】(自然度低い)〜【V】(自然度高い)の種群に分けた。種群【V】はさらに、自然度の高い林分に広く分布する種(【V】0),内陸種(【V】1),海岸低地種(【V】2)に細分した。 6.種群【V】全体に関しては、産出種数と林分面積との間には、直線的な相関関係は認めがたい。0.5ha以下の小面積林分では【V】種数は明らかに少数であるが、それ以上の面積の林分では周辺環境の影響度や林内における人為の種類や強度の影響の方を強く受ける。 7.コケ植物に関しては、樹皮上,岩上,土上の3通りの立地それぞれにつき、種の自然度を3段階に分類できた。 8.自然度の高い立地に出現する種の代表は、樹皮上ではソリシダレゴケ岩上ではコクシノハゴケ、土上ではトサホラゴケモドキであった。 9.上記3種の立地では自然度に対するコケ植物の感度に差異があり、樹皮上の種が最も敏感で変化に対して弱い。 10.コケ群落の優占度-種順位関係においては、土上群落,樹皮上,岩上の順で単純化する。
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