長野県茅野市蓼料山山麓の隣接する二つのカラマツ、ミズナラ林で、過去大発生が記録されているキシャヤスデ個体群の動態と成長に関して基礎的な研究を行った。多くの大発生を起しているキシャヤスデは単一世代のみの生息が多い。しかし本研究の調査地では連続した二世代のキシャヤスデが生息していることが観察された。キシャヤスデの大発生にはこの単一世代個体群の維持ということが関連しているものと考え、他の大発生地にない生息状況を示すこの調査地を選び、大発生と単一世代の関係を考察しようとした。 しかし研究を継続してゆくうちに、二世代のうちの一つの個体群の密度が著しく減少し、ついには追跡不可能となり二世代の個体群の動態の研究はうち切らざるを得なくなった。この後若干研究方針を変更し、尾発生とカラマツ林との関係を個体群動態から研究を行った。この結果、キシャヤスデの大発生にはカラマツ林とそれに接する広葉樹林または草原という、カラマツ林とそれに接する他の性質の異った立地状況が関連していることが推察された。 1つは大発生時の群遊行動は8令成体が、より良質のエサを求めたカラマツ林から他の場所へ移動することであろうと認識された。それにもかかわらずキシャヤスデの大発生がカラマツ林近くから起るのは、その後の産卵の捕食との関係で、カラマツ林の存在が重要な意味を持つことが示唆された。 また大発生の機構を考えるために、キシャヤスデの4令以上の呼吸速度を測定し、大発生時の8令は温度条件にたいして他の令と異った温度特性を持っていることが明らかになった。 基礎的な資料として1985年7月から1987年7月まで調査地の土壌温度を測定し、ほぼ1年間の有効な資料を得た。この資料は現在解析中で、また時期を改ためて発表する予定である。
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