研究概要 |
光化学系Iの分子構築における脂質の役割を明らかにするため、反応中心に富むクロロフィル蛋白(CPI′)と集光性クロロフィル-蛋白(LHCI)を脂質のリポソーム中に再構成し、その性質について調べ次のような結果を得た。 1.大豆のホスファチジルコリンで両複合体を再構成すると、弱光下で測定したP700の光酸化速度(kP700)の量子収率が増大し、LHCIが系工のアンテナとして働いていることがわかった。再構成された複合体の蛍光の発光スペクトルは両複合体混合液では見られない長波長型の発光体(〜733nm)を示した。また両複合体のCDスペクトルは、正の吸収帯(655nm)と2つの負の吸収帯(648nmと686nm)を示した。再構成すると吸収帯の位置は変らなかったが、665nmの正の吸収帯と686nmの負の吸収帯の強度が増大した。このように再構成されたものはCPIa(CPI′とLHCIから成る複合体)のものとよく似た性質を示した。 2.ホウレンソウのチラコイド膜より抽出した中性脂質(モノガラクトシルジグリセリド,ジガラクトシルジグリセリド,ホスファチジルコリンを含む)で再構成すると、kP700の量子収率は増大した。そのうちモノガラクトシルジグリセリドが最も効果的であった。一方酸性脂質(スルホキノボシルジグリセリドとホスファチジルグリセロールを含む)で再構成したものではkP700の量子収率は変らなかった。3.以上の結果よりチラコイド膜脂質のうち中性脂質、特にモノガラクトシルジグリセリドが光化学系Iのクロロフィル-蛋白質複合体の会合に重要な役割をしているのではないかと考えられる。LHCIには730nmに蛍光を発するLHCI-730と680nmに発光するLHCI-680の2種類があり、それぞれ分離・精製できる。どちらも系Iの真のアンテナであるのか、また葉緑体で730〜740nmに蛍光を発する意義は何かをこのような再構成の研究より今後明らかにしたいと考えている。
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