研究概要 |
クロロフィル蛋白質の生合成 トウヒ(針葉樹)子葉は暗所で葉緑体を形成する。この子葉に連続光を照射すると、チラコイド膜のクロロフィル含量、ポリペプチド組成が著るしく変動し、チラコイド膜の性質は暗所生育下のものと異なっていた。この結果から裸子植物においても特定のクロロフィル蛋白質の合成には光が必要であることが明らかとなった。これを確認するため子葉のチラコイド膜を界面活性剤(オクチルグリコシド)で可溶化した後、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動を行ない、次の結果を得た。(1)光照射下で生育したトウヒ子葉チラコイド膜では、光化学系【II】のクロロフィル蛋白質(CP)であるCP27,CP29,CP43,CP47,さらにCP27の会合体CP64,光化学系【I】の反応中心を含むクロロフィル蛋白質複合体CP1,光化学系【I】の集光性クロロフィル蛋白質(LHC1)とCP1の複合体CP130など9本のCPバンドが認められ、少なくとも6種類のCPにより構成されていた。(2)これに対して、暗所で生育したトウヒ子葉のチラコイド膜では、CP27,CP64,CP130などのCPに相当するバンドが欠如していた。以上は、明所でクロロフィル量は約4倍増加するが、その多くは光化学系【I】,【II】の集合性クロロフィル蛋白質となることを意味する。暗所で生成されるクロロフィルの多くは光化学系【I】,【II】の反応中心を構成するものと思える。またこの結論は低温ケイ光スペクトル,クロロフィル分析からも支持できた。クロロフィルの生成と分解 暗所で低温またはアミノデブリン酸の存在下で生育したトウヒ子葉は種々のフィトール誘導体をもつクロロフィル類を含むことが明らかとなった。また、クロロフィル蛋白質を電気泳動中にも同様のフィトール誘導体をもつクロロフィル類がクロロフィルから人工的に生成された。従ってフィトールの酸化と環元の機構について今後明らかにする必要がある。
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