緑葉中のプレニルキノン類を分別定量する方法と、プラストキノンAの生体内での酸化還元状態を迅速に測定する方法を確立した。それはキノンの抽出と前処理、逆相高速液体クロマトグラフィーによる分離、二極式ボルタンメトリー検出器による定量等にもとづくものである。 上記の方法でつぎのことがらを見出した。 1.葉緑体内のプラストキノンはチラコイド膜中タンパク質複合体と結合しているものと、脂質中に分散しているものがある。前者は固定された電子とプロトンの担体として、後者は複合体間の可動性担体として機能しているのであろう。プラストキノンの同族体の含量比は葉緑体内諸部城でほゞ同じであった。同族体はそれぞれ異なる機能を果しているのではないだろう。フイロキノンは光系工粒子に局在し、そこでの電子伝達に関与しているらしい。トコフェロールキノンは膜内に均一に分布しており、前駆体であるトコフェロールが光合成色素系の強光障害防止に機能することに対応しているらしい。 2.ホウレン草葉の生育の過程でプラストキノンCの含量は増加し、ユビキノン-9は減少していき、それ以外のプレニールキノン類の含量は変動しない。生育に伴い葉の積算受光量が増加するのでプラストキノンAが光化学的にプラストキノンCに変化しているものと推測される。光障害防止の機構の一部かも知れない。ATP合成系としての呼吸系は、葉の生育に伴い光合成系で部分的に置換されているようである。 3.光化学系【II】の活性には、反応中心あたり二分子のプラストキノンAが必要であった。 4.葉緑体内のプラストキノンAの酸化還元電位は、pH7.8で+20mVであった。
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