研究概要 |
下記の五つのテーマについて研究が進められた. (1)ナミアゲハの蛹期間中のβ, アラニン(β-A), ドーパアミン(DA), N-β-アラニルドーパアミン(NBAD)の量的変化, 蓄積, 排地 について. 蛹および羽化的の成虫で1匹全体, 体液, 翅のβ-A, DA, NBADをHPLCで分類定量した結果, ナミアゲハでは, キヌレニンとNBADの両方が体液から翅または鱗粉に入り, そこで両者が結合してパピリオクロームIIになることが推定された. (2)キアゲハの濃黄色色素(パピリオクロ-ムM)について。^<14>C-トリプトファン、^<14>C-β-アラニン、^<14>C-ド-パアミンの注射実験により、この濃黄色色素はパピリオクロ-ムIIと同様、キヌレニンとβ-AとDAより成ることが明らかになった。また10<-2>N塩酸加熱によりキヌレニンとN-β-アラニルノルエピネフリンに分解し、後者はさらに1N塩酸加熱によりβ-Aとノルエピネフリンとに分解することが確かめられた。 (3)ベニモンアゲハのA型赤色色素について. この色素はβ-アラニン含有キノン系色素であることが分かった. NBADまたはN-β-アラニルノルエピネフリンにフェノールオキシダーゼが働いて生ずるものと予想される. (4)キイロショウジョウバエの囲蛹殻のクチクラの硬化について. yのクチクラは黄褐色で, 硬く, タンパク量少なく, β-A多く, ケトカテコールの放出は少ない. 一方, bとeのクチクラは白く, もろく, タンパク量多く, β-Aは微量或はゼロであり, ケトカチコールの放出は多い. このようなクチクラの化学的性質は, クチクラの塩酸メタノール抽出タンパク質で調べることが可能であることが確かめられた. (5)ナミアゲハの成虫の不溶性結合型β-アラニンについて. 成虫の体壁及び翅の膜には70%エタノールに不溶性のβ-アラニンが存在し, これは蛹の後期からすでに入りこんでいる. これは成虫のクチクラの硬化の機構を調べる上で重要なことと思われる.
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