研究概要 |
1.ヒメイカの発生段階表の作成. : ヒメイカは, 小型で採集が容易で飼いやすく実験質内で卵を容易に得ることが出来るので, 頭足類の発生生物学の材料として最適である. 小容器内で飼育された雌は, 30-80個の卵を2-7日おきに産む. 発生の研究には発生段階を性格に同定するための発生段階表が要求される. そこで, ヒメイカの発生過程を実体顕微鏡で観察し詳細なスケッチをえがくことにより, 将来の研究の基準となる発生段階表を作成した. 産卵されてから胚が孵化するまでの18日間(20゜C)にわたる発生過程を30のステージに分けるのが最も合理的であると思われる. 2.シリヤケイカの発生過程における卵嚢の膨張. : シリヤケイカの卵嚢は, 発生の最初の8日間は, ゼラチン層より水が失われることにより収縮する. しかし, 9日目に胚の周囲に囲卵腔が出現してから後は, そこへの吸水により次第に膨れ, 孵化時には胚の回りに大きな空間を作り出す. この空間は胚の孵化運動のために必要である. 囲卵腔液と海水間の浸透圧の差は, 発生過程を通じてほぼ一定で, 約135mmol/kgであった. 囲卵腔液中のタンパク質濃度は発生の進行と共に増加した. このタンパク質が囲卵腔液の浸透圧を作り出していると思われる. 3.シリヤケイカにおける網膜の発生. : 頭足類の発生における器官形成の1例として, シリヤケイカ網膜の発生過程を電子顕微鏡, 組織蛍光法および電気生理学的手法で, 形態形成と機能発現の両面から追求した. 網膜の形成過程は形態的に4期に分けることができた. ERP(早期受容器電位)の出現は, ロドプシンの蛍光が網膜に出現する時期にほぼ一致していた. ERP(網膜電図)の発達は, 光受容部の構造的発達と一致していた.
|