われわれは、先にアフリカツメガエル8細胞胚を第一分裂面で半分に切り分けて得られる半胚が、ある培養条件では調節的発生を行なって正常な形の尾芽胚になるが、別の培養条件では調節を行なうことができず、右あるいは左半分を欠く「半尾芽胚」に発生することをみた。この研究では、調節を可能にする条件と、調節を可能にしたり不可能にしたりしている原因を明らかにすることを目的とした。 まず着目した点は、半尾芽胚が多数の外原腸胚とともに生ずることである。両生類では、高い塩類濃度が外原腸胚形成を高い頻度でひきおこすことが以前からよく知られていた。そこで、両生類胚の培養にもちいられる10%スタインバーグ液に、異なる量の塩化ナトリウムを加えて、いろいろな塩類濃度の培養液を用意した。これらの培養液中で、アフリカツメガエル8細胞胚を第一分裂面で半分に切り分けて得られた半胚を、対照胚が尾芽胚期に達するまで飼育した。これらの胚の外部形態と組織標本を観察した。 得られた結果から、培養液の塩類濃度が高いほど調節の程度は小さく、半尾芽胚の出現頻度が高いこと、反対に、塩類濃度が低いほど調節の程度は大きく、正常な形の尾芽胚が多くなることが明らかになった。われわれの先の知見も、塩類濃度の違いによるものと解釈することができる。外部形態と組織標本の観察から、調節の程度が非連続的ではないことも分かった。ほぼ正常な尾芽胚から完全な半尾芽胚に至るまで、いろいろな形の胚が観察された。発生過程の経時的観察からは、半尾芽胚形成に不完全な陥入がともなうことが明らかになった。すなわち、原口が閉じず、陥入の進行につれて内胚葉が露出することが観察された。調節にとって重要な、原腸形成期に起こる出来事というのは、正常な陥入である可能性がある。
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