メダカの視運動反応を指標として、視覚系および視覚性眼振運動の発達と神経機構を調べることが本研究の目的である。1.メダカの孵化後の発達時期における視運動反応の有無について調べた。(1)メダカは孵化後3日目から5日目の間に視運動反応が低下した。それは白黒縞のドラムの回転刺激に対しての追随能力が、孵化後1〜2日目にみられていた能力より低下したことによる。また個体によっては刺激のドラムの回転方向とは反応の方向に定位する個体もみられた。(2)視運動反応は追随運動によるもので、それは網膜の二重錐体細胞と眼筋の発達に関連している。孵化後2〜4日頃は二重錐体細胞は発達しているのだが、眼筋運動の発達が悪く、追随運動に関する視覚性眼振運動の機能が低下するものと思われる。それはドラムの速さにあった眼振運動が生じないためである。 2.メダカの行動生理学的な実験から、視運動反応の発達は視覚性眼振運動の発達によっていることが推察された。まず視覚性眼振運動の神経系に関する制御機能を明らかにするため、ウグイを材料として電気生理学的解析を行った。無麻酔の状態で視床一前視蓋領域に電気刺激を与え、その時生ずる眼振運動を記録した。この結果と視覚性刺激がある場合の眼振運動とを比較し、脳における神経回路を明らかにすることを試みた。(1)電気刺激によって発現する眼振は常に両眼に同期した運動である。(2)電気刺激の間眼振は持続して現れる。(3)眼振の振幅は3゜〜14゜であった。(4)両側の視床一前視蓋領域のうち右側領域を電気刺激すると、眼振はドラムを時計方向に回転したときと同じ反応を示した。また左側領域を刺激したときは、反時計回転方向の眼振が誘発された。(5)電気刺激によって誘発される眼振は明暗条件下で異っていた。以上の結果から視覚性眼振運動の発現にかかわる脳の部域を同定することができた。今後孵化後の視覚性眼振運動にかかわる神経回路の発達を調べる予定である。
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