研究概要 |
1986年5月〜12月にかけて日本での未調査地であった富山県・石川県・大阪府・福岡県・熊本県・鹿児島県(尾久島・種子島・奄美大島及び沖永良部島)の洞穴棲コウモリを採集して、それぞれのコウモリに寄生している条虫種の同定を行った。そして宿主特異生(host-parastite relationship between bat and cestode)の観点から日本産洞穴棲コウモリの系統を検討した。 Rhinolophus ferrumequinum nippon 水無鐘乳洞(福岡県),防雪用トンネル及び廃屋(富山県),Mn廃坑(大阪府),權現山洞(熊本県)から採集したコウモリに固有種であるHymenolepis rashomonensisが寄生していた。 R.cornutus cornutus 權現山洞,防空壕跡及び海蝕洞(種子島)のコウモリに固有種であるVampirolepis isensisが寄生していた。 R.cornutus orii 銅廃坑(奄美大島)のコウモリにV.isensisが寄生していた。 R.pumilus おなが鐘乳洞及び黄鉄鉱廃坑(沖縄本島)のコウモリには条虫寄生は皆無であった。 Miniopterus schreibersii fuliginosus 廃坑(石川県),權現山洞及び新地の穴(熊本県)のコウモリには固有種であるV.hidaensisが寄生していた。 M.schreibersii blepotis エラブ洞(沖永良部島)のコウモリにはV.hidaensisが寄生していた。 Murina aurata ussuriensis 金鉱山廃坑(屋久島)のコウモリには新種と思われるVampirolepis sp.が寄生していた。 以上の結果から日本各地に生息するR.ferrumequinum nippon,R.cornutus cornutus,R.cornutus oriiは夫々系統的に関連性があり、M.schrebersii fuliginosusとM.schreibersiiblepotisも系統的に近い種であることが判明した。今後さらに沖縄本島のコウモリについて寄生条虫の発見が望ましい。
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