研究概要 |
1987年3月〜1988年3月の間, 日本の未調査地である沖縄本島, 久米島, 長崎県五島列島福江島及び嵯峨ノ島, 長崎県対馬, 大阪府の一部, 静岡県, 青森県並びに岩手県下に生息するコウモリの寄生条虫種を明らかにした. そして宿主特異性(host-parasite relationship between bat and cestode)の観点から未調査地域のコウモリの系統的関連性を詳しく検討した. Rhinolophus ferrumequinum nippon 福江島, 嵯峨ノ島, 大阪府下, 静岡県下のコウモリに固有種であるラショウモン条虫Hymenolepis rashomonensisが寄生していた. R.cornutus cornutus 福江島のコウモリには固有種であるイセ条虫VampirolepisisensisにまじってV.ikezakiiが寄生しており, 静岡県下のコウモリにはイセ条虫が寄生していた. しかし, 対馬コウモリには条虫は寄生していなかった. R.pumilus 沖縄本島のオナガ洞(3回目の調査)及び久米島のコウモリには条虫の寄生は認められなかった. Miniopterus schreibersii fuliginosus 嵯峨ノ島及び福江島, 対馬のコウモリには固有種のヒダ条虫V.hidaensisが寄生していた. Myotis hosonoi 岩手県下のコウモリにV.rikuchiensis 及びV.uchimakiensis が寄生したいた. M.natterei bombinus 岩手県下のコウモリにV.brevihamata,Hymenolepis sp.が寄生していた. Nyctalus lasiopterus aviator 岩手県下のコウモリにV.stenocephala,V.toohokuensis及びHymenolepis sp.が寄生していた. 以上の結果から日本各地のR.ferrumequinum nippon,R.cornutus cornutus,Miniopterus schreibersii fuliginosusは夫々系統的な関連性がみられ, 青森県並びに岩手県で採集したコウモリにも寄生条虫(Vampirolepis属条虫Hymenolepis属条虫)が多くみられたことは系統的にみて重要である.
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