1.前年度の研究においては、コレシストキニン(CCK)をコレステロール(Chol)と混合してラット視床下部正中隆起に植込むと黄体形成ホルモン(LH)の血中濃度が低下したが、腹内側核への植込みでは明瞭な結果が得られなかった。本年度は他社製品のCholを用いてCCKと混合し、正中隆起、腹内側核および弓状核に植込み、LH、濾胞刺激ホルモン(FSH)、プロラクチン(PRL)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の血中濃度を測定した。腹内側核および弓状核にCCKを植込まれたラットでは上記4種のホルモンの血中濃度は対照群のそれと差はなかったが、正中隆起に植込まれたラットではLHのみ血中濃度が対照群より有意に低くなった。CCKは正中隆起でLH放出ホルモンの放出を抑制するように働いている可能性が再確認され、他部位ではホルモンの放出に関与しないことが示唆された。 2.P物質をコレステロールと混合し、正中隆起に植込むと、TSHの血中濃度が著しく低下したが、LH、FSH、PRLのそれには影響を及ぼさなかった。この結果は、P物質が正中隆起でTSH放出ホルモンの放出を抑制するように働いている可能性を示唆している。 3.原索動物頭索類ナメクジウオの中枢神経系について、種々の神経ペプチドの抗血清を用いて免疫組織化学的研究を行ったところ、メチオニンエンケファリンおよびβ-エンドルフィンの抗体にそれぞれ免疫反応を示す神経細胞体および神経繊維、アンジオテンシンII、アルギニンバソプレッシン、オキシトシン、コレシストキニン、LH放出ホルモン、ウロテンシンIにそれぞれ免疫反応を示す神経繊維を見出した。しかし、ロイシンエンケファリン、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、心房性ナトリウム利尿ホルモンに免疫反応を示す神経細胞は見出せなかった。
|