研究概要 |
韓国にはジュウ紀と白亜紀の花こう岩類があり、白亜紀の花こう岩類はジユウ紀の花こう岩類に比べて浅所貫入のものであることは既に研究代表者ら(Tsusue et al.,1981)が明らかにしたところである。また、韓国のAu,Mo,W,Cu,Pb,Zn,等の金属鉱床は主として白亜紀の酸性火成岩類に関連して生成したことも代表者ら(Shimazaki et al.,1986)が既に明らかにしたところである。このことは多くの金属鉱床が浅所貫入の花こう岩類に伴うことをよく示している。韓国のジュウ紀花こう岩類はそれらの浅い部分を既に侵食されたものと考えられる。このような花こう岩類がどのようにして分化したかを知るために、放射化分析によって韓国,西南日本,及び中国の花こう岩類の微量成分を定量した。その結果、主としてREE(希土類元素)パターンとそのモデル計算から、韓国の白亜紀花こう岩類は主として分別結晶作用によって分化したものと推論されるが、ジュラ紀の花こう岩類は同様な分化様式によって分化したものとは考え難い(Tsusue et al.,1987a)。西南日本は内帯と外帯に大別されるが、内帯は、花こう岩岩石区として、さらに北から南に向って山陰帯,山陽帯,及び領家帯に分帯される。西南日本の四帯の花こう岩類のREEパターンを比較検討した結果、これらの花こう岩類の時代は白亜紀(山陽帯及び領家帯),古第3紀(山陰帯),及び新第三紀(外帯)と異るが、いずれも主として分別結晶作用によって分化したものと推論される(Tsusue et al.,1987b)。日本のジュラ紀及び三畳紀花こう岩類とされている飛騨山地の花こう岩類についても既に放射化分析を完了している。これらの花こう岩類のREEパターンをみると、多小分別結晶作用によって分化したとみられるものもあるが、必ずしも韓国のジュラ紀花こう岩類のREEパターンに類似しているともいえない。飛騨山地の花こう岩類の分化様式の解明は今後の問題であろう。
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