研究概要 |
原子に関する共鳴フオークト効果の理論を二原子分子に拡張し、この理論に基いて火炎中のOH分子を検出し、その絶対数密度を決定する研究を行った。 光源として、QスイッチNd:YAGレーザーの第2高調波によってパンプしたDCM色素レーザーを用い、その第2高調波(波長310〜320nm)をOH分子A-X帯の1本の回転線に同調させた。レーザー光は楕円偏光状態でプロパン・空気炎に入射した。火炎には0.76Tの横磁場を印加した。火炎の温度は2100±100 K,光路長は15mmであった。偏光解析系の消光比は9×10~7であった。検光子の透過光を光電子増倍管で検出し、信号処理系で処理した。分子の共鳴フオークト効果信号プロフイルを高分解能で測定できるようにするため、色素レーザーにはプリズム・ビーム・エキスパンダと2枚の回折格子を用い、レーザースペクトル線幅として3GHz(FWHM)が得られた。 上記の実験装置を用いてOH分子A-X遷移(1-1)帯のQ1(1)およびQ21(1)回転線の共鳴フオークト信号プロフイルを測定した。測定プロフィルは、微細構造を含めて、理論とよい一致を示した。上記2本の回転線の下位準位に分布するOH分子に関して、検出下限分子数密度は1×【10^(12)】Cm~3であった。この結果は、共鳴フオークト効果分光法が極微量分子の絶対定量に応用できることを示すものである。 共鳴フオークト効果による分子検出感度を吸収法と比較すると、約【10^2】倍高感度で、これは理論的予想と一致する。本研究によって、共鳴フオークト効果分光法が分子検出に対しても有効であることが立証され、気相反応の診断への応用も期待できる。
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