研究概要 |
昨年度(初年度)に完成した超高真空ドリフトチューブ実験装置を用いて、Arについての励起係数の測定を完了した。その結果をボルツマン方程式による解析と比較して、Arの電子衝突励起断面積の絶対値を導出した(phys.Rev.Aに発表)。今年度の新らたな実験計画として、Kr及びXeについて同様の実験ならびに解析を行ってきた。具体的には、励起係数を換算電場(電界強度Eとガス密度Nの比)の関数として求めた。Kr,Xeの第一励起準位(【IS_5】)についての結果を昭和61年秋の応用物理学会及び日本物理学会において報告した。 これらの重い希ガスについては、同位体の存在によってスペクトル線が超微細構造を持つため、ドリフト領域における励起原子密度の正確な算出にはスペクトル線形状についての詳細なデータが要求される。我々が本研究において開発した高感度吸収分光法は分解能の点でも優れており、スペクトル線形状の測定にも適している。従って、現在その測定に取組んでいる所である(結果の一部は昭和62年春の応用物理学会において発表予定)。 なお、現在の研究の対象となっているXeは、カラープラズマディスプレイの動作ガス,すなわち蛍光体励起用紫外線光源として用いられる可能性があり、ディスプレイの輝度や発光効率の改善のために電子衝突励起に関する基礎データが必要とされている。我々はこの要求に対応するために、Xe純ガスのみならず、Heなどの他の希ガスと混合した場合も含めて、紫外線発光準位(【IS_4】)の励起係数の測定を勢力的に行っている。
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