本研究は、最近発達が著しい新素材(生体材料、セラミック、岩石等)の変形と強度に関する基礎的なデータを得ることを目的とし、その変形測定には非接触で実表面状態のままで局所ひずみ量が得られるスペックル法を用いた。まず、初年度(昭和60年度)では、高温スペックル用雰囲気電気炉及びそれを支持する荷重装置、試片把持用セラミックチャックを作製した。そして、高温下での変形測定の第一段階として、室温から500℃までの中温域での岩石(セラミック)の局所的変形と破壊過程でのひずみ変化が、精度良く(10^<-4>ストレイン)求められることがわかり、その結果、小型試験片からの、き裂先端のK値を求めることに成功した。その結果、小型試験片からのK値の導出の際に問題となるK値の寸法依存性や温度変化について、特に小型の試験片では、実際の高温下で起っているき裂先端の変形は、計算値よりもかなり小さな値になっている事実が明らかになった。これは、今後のセラミックス等、小型の試験片からの破裂靱性の評価に重要な知見が得られる可能性を示すもので興味深い。この研究成果の一部は、学会誌「非破壊検査」第34巻9A号で発表した。しかし、大気中500℃以上の温度範囲では"空気のゆらぎ"のために明瞭なスペックル再成縞を得るのは困難であった。そこで、レーザー光チョッパー等を使用し、改善を試みたが、良い結果は得られず、本装置での高温スペックル法の適用範囲は、初期の目標値よりも低い500℃までとわかった。その他、新素材の一つであり、生体材料への応用を考えられている、形状記憶NiーTi合金焼結体の力学的特性の測定に適用した。その成果は、欧文誌「Juurnal of Material Science Letters」に発刊される。
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