1.厳密解の決定 引上法あるいは浮遊帯法による単結晶育成過程を、より正確に表現できるすなわち有限長さで、移動固液界面を考慮したモデルを仮定し、このモデルに対して、三次元熱弾性論により、育成中の熱応力および育成後の残留応力の厳密解を求めた。 2.育成過程および育成条件の調査 学会誌および学術講演会等で発表された約50の、【III】-V族化合物半導体の育成実験例を収集、整理した。同時に、転位分布を示すX線トポグラフおよびエッチピット分布の写真も、収集、整理した。 3.数値計算前述の実験例をもとに、数値計算を行った。次の知見を得た。(1)熱応力および残留応力の大きさを支配する要因は、主としてビオ数である。(2)固液界面の近傍の外周部に生ずる熱応力は、育成過程中で最大である。(3)結晶の長さが直径の約2倍をこえると、応力は結晶の長さに影響されない。 4.転位分布 前述の数値計算をもとに、fcc結晶の分解せん断応力分布を求めた。さらに、Penningの考えを導入して、転位配列パターンを推定し、収集した【III】-V族化合物半導体ウエハの転位分布と比較した。次の知見を得た。(1)推定した転位配列パターンと、実物の転位分布はよい一致を示した。(2)低転位あるいは無転位単結晶を育成するには、育成中の熱応力、育成後の残留応力を低減する必要がある。このためには、できる限り低ビオ数になるように、炉内の温度環境を改善することが有効である。(3)具体的には、液体封止剤の層を厚くすること、アフター加熱をすることが考えられる。
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