研究概要 |
冬期間の建物からの熱移動現象を明らかにすることは、寒冷地における建物の保温性並びに断熱性を評価する上で重要である。このような観点に立脚し、本研究は壁面上に付着する建物モデルとしての三次元的形状を有する角柱に関して風洞モデル実験を遂行したものである。昭和60年度は、建物としての断面形状の異なる各種モデルを大気乱流境界層の発達する風洞測定部床面上に設置し、それら周辺の圧力分布,速度分布およびフローパターンの測定を行って、建物からの熱伝達特性を支配する流動機構を明らかにした。つぎに昭和61年度は、複数で存在する場合の建物周辺の流動状態を明らかにするとともに各種形状の異なる角柱モデルからの熱伝達の特性を調べた。要約すると以下に示す事項が明らかにされた。 (1)各種角柱モデル表面および設置された壁面上のフローパターンの観測に基づき、角柱表面からの熱移動に最も関連のあるはく離領域の大きさ並びに位置を明らかにすることができた。 (2)各種角柱モデル表面上の圧力分布の測定に基づき、熱伝達の最も大きくなるはく離流の再付着位置を明らかにすることができた。とくに迎角の変化は、角柱表面上の再付着位置を大きく変化させることが判明した。 (3)角柱モデルからの熱移動を支配する後流の構造を調べた結果、形状の異なる二通りの渦が生成されることが判明し、かつ角柱のごく近傍でこれらの渦は崩壊し拡散することが明らかとなった。 (4)複数で存在する角柱周辺の流動パターンを調べた結果、相互干渉によって単独で存在する場合とかなり異なることが判明し、今後複数物体の熱伝達特性の研究が必要であることが判明した。 (5)角柱表面の熱伝達特性を調べた結果、流れのはく離・再付着現象がこれらを大きく支配することが判明した。
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