研究概要 |
乱流剪断層を通過するレーザー・ビームの劣化に対しては時に米国においてさかんに研究が行なわれており、この数年で剪断層が直線的な場合については乱流特性とビームの劣化特性の定量的な関係がおおむね明らかになってきた。また剪断層が湾曲している場合には特にビームのコヒーレンスの低下が著しいことも実験に示された。そこで本研究では特に噴流の乱流特性におよぼす湾曲の効果に着目し、湾曲噴流内の乱流諸量の測定を行なった。 湾曲噴流内の乱流剪断応力を記述する理論式は混合距離におよぼす遠心力の効果を考慮してSayerによって与えられているが実験によって決まる遠心力効果定数Cを含む。Cの評価はいく人かの研究者によってなされており、噴流の初期領域では5〜8,また充分に発達した領域では3程度とされている。これらはいずれも噴流の付着距離や平均速度分布によりCを評価したものである。したがって噴流内の乱流特性の分布は明らかにされていない。このため、レーザー・ビームの劣化を評価するデーターとはなり得ない。そこで昭和60年度は円弧に沿う噴流内のレイノルズ応力を測定し、これとSawyerの式を用いてCの評価を行なった。この結果、Cは噴流の初期領域で10以上の値をもち、下流方向に急激に減少してノズル中の25倍程度下流では3程度に減少することが示された。昭和61年度は、特に噴流の初期領域に主眼をおき各種の乱流パラメーターや乱流エネルギー保存式とレイノルズ応力輸送方程式の各項の大きさを実験的に評価した。 今後は、湾曲噴流を通過するレーザー・ビームのコヒーレンスを測定し、得られた乱流測定結果と光学測定結果をもとにしたモデル化を行なう。
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