水平軸の周りに回転する円筒内凝縮熱伝達について、実験装置を設計製作し、R113を用いた凝縮実験を行うとともに、その結果をもとに理論解析を行い、両者の間によい一致を認めた。 実験は、円筒内面頂部に液膜を機械的にかき取る平板状スクレーパを設けることにより、、従来のサイフォン式排液方法に比し、きわめて薄い液膜厚さにすることが可能であることが判明した。また、円筒外表面温度に着目して円筒の熱通過率を対象とし、熱伝導率の異なるアクリル製とステンレス鋼製の2種類の円筒について実験を行い、熱通過率Numへの熱伝導低抗比Cの影響を明らかにした。 理論解析では、実験結果から得られた知見をもとにして、液膜がきわめて薄いと云う条件のもとに、液膜内速度分布、温度分布を求め、液膜における熱収支式から、液膜厚さSに関する基礎式を導き、Runge-Kutta-Gill法によって数値積分を行い解を得た。その結果、回転速度が低下し、液膜厚さがある限度以上になると、液の一部が円筒底部に滞留する滞留限界を明らかにすることができた。また、Numへの影響因子として、回転レイノルズ数Rew、プラントル数Pr、顕潜熱比H、熱伝導抵抗比C、スクレーパー通過後の初期液膜厚さ【So^*】とするとき、液膜が滞留限界より十分小さい場合には、Numは二つのパラメーター〔H/(Rew・Pr)〕と〔C+【So^*】〕のみにより支配され、これらのパラメーターの値が小さい程Numの増加する関係を明らかにした。一方、滞留限界近くでは、スクレーパー設置位置を頂部より進めることで熱伝達を増進できることが判明した。 これらの解析結果は実験と比較的良い一致を示した。以上の結果は日本機械学会論文集に投稿予定である。
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