本研究では、磁性流体を作動流体とした電気油圧信号変換素子を開発するための基礎として、磁性流体の気中液二次元自由噴流の、偏向磁界内での静的および動的挙動について検討を行い、その結果を踏まえて電磁石制御式層流型比例増幅素子の試作を行い、信号変換素子としての可能性を検討することを目的とした。 実験に先立ち、気中液二次元自由噴流の偏向角を求める理論式を導出した。静特性試験より【i】)偏向角θは流速の自乗に反比例する、【ii】)偏向角θは磁性流体の磁化と磁界勾配の積に比例する、等のことが分り、導出した理論式の妥当性が確認された。さらに、ノズル形状は偏向角に影響を与えるが、その度合は流速が遅く、磁界勾配が大きい場合ほど大きい影響を与えることも判明した。 また動特性試験より、良好な周波数特性を得るためには、偏向角の減少をいとわずに、ノズル部での平均流速を高める必要があり、電磁石制御式層流型比例増幅素子を開発するにあたっては、レイノルズ数が数百のオーダになるようノズ部を設計する必要があることが分かった。 以上の実験からの知見に基づいて、電磁石制御式層流型比例増幅素子を設計試作した。この素子の特性試験を行ったところ、【i】)ノズル供給特性および圧力回復特性は、通常の層流型比例増幅素子の性能とほぼ同じであり、これらの特性に関しては、素子形状は適切であった、【ii】)電磁石制御式層流型比例増幅素子の出力圧力差は、入力電流の約2乗に比例した、【iii】)1[A]の入力電流に対しノズルアスペクト比1で74.7[KPa]の最大出力差圧が得られることが分かった。これらの結果から、磁性流体を作動流体とした電磁石制御式層流型比例増幅素子による電気油圧信号変換は十分可能性があることが分かった。
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