本研究は、階段波出力形インバータにパルス幅変調機能を付加し、振幅変調とパルス幅変調の複合変調方式を採用することにより、超低ひずみ出力電圧波形をもつ可変電圧・可変周波数の単相及び三相インバータを開発するための基礎的知見を得ることを目的とするもので、以下の研究成果が得られた。 1.複合変調方式単相インバータ 出力電位が1レベル毎に下がる新しい方式を考案した。新方式の波形ひずみ率は従来方式の1/2以下になり、良好な出力波形となるが、低次高調波成分が比較的大きくなる欠点が生じた。そこで、期間30゜当り1パルス波形から3パルス波形とすることによりこの欠点が解消できることを理論的に明らかにした。本方式の単相インバータを試作し、その実験結果から、良好な特性が得られることを確かめ、その実用性を明確にした。家庭用小型扇風機の1/fゆらぎシステムに本方式のインバータを用いたところ、広い速度範囲にわたって円滑な運転ができた。 2.複合変調方式三相インバータ 複数台の三相インバータを結合リアクトルを介して並列接続し、単位インバータのキャリア信号間に適当な位相差をもたせることにより複合変調波形が得られる。本方式のひずみ率と多重数の関係、それに及ぼす出力パルス数と変調指数の影響を体系的に検討した。その結果、変調指数が小さくなると、電圧ひずみ率は多重数の増加によって単調に減少しない場合があることを見出した。次に、誘導電動機を単一インバータで駆動する場合、及び二重化インバータで駆動する場合の特性を解析し、出力パルス数9の場合には、二重化によりトルク脈動は半減する効果が得られることを明らかにした。 以上、複合変調方式によりインバータ出力波形は格段に低ひずみ化され、負荷に及ぼす高調波障害は著しく軽減できた。しかし、スイッチングに伴う電磁障害問題は未解決である。
|