溶液法によって作成された二次元球晶をもつポリエチレン(PE)薄膜の絶縁破壊が球晶境界で多く生じていることは、既に判っている。球晶境界を形成しているPEの非晶質の絶縁破壊の強さ(Eb)を調べるため、完全な非晶質のエチレン・プロピレン共重合体(EP)を用いて、ポリエチレン同様に薄膜を作成し、絶縁破壊特性を調べた。その結果、EPがゴム状態である室温では、PEの溶融状態(約110℃)と類似の特性が現われ、またガラス状態である低温(約-100℃)では、PEの室温および低温の特性と類似していることが判った。しかしEPにピレンを添加すると無添加のEPより、室温ではEbが大きくなるのに対し、低温では小さくなり、PEにピレンを添加したときとは異なる様相を呈した。次年度では、Ebの極性効果を調べた後、絶縁破壊に及ぼす空間電荷の影響を検討したい。 自己回復性破壊の手法によるPE薄膜の球晶境界のEbは、既に概ね判っている。しかし、球晶のEbは全く不明であり、自己回復性破壊の手法では測定することが出来ない。そこで、今年度、針ー平極電極を用いて、光学顕微鏡下で針を球晶または境界に選択的に置いて絶縁破壊特性を調べた。針電極直下の絶縁破壊から得られた球晶のEbと球晶境界のEbを比較すると、球晶のEbが約0.4MV/cm大きく現われることが判った。このことについて、次年度では、自己回復性破壊(平板ー平板電極)と針ー平板電極との電極系の違いが、Ebに与える影響を検討したい。
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