研究概要 |
B1型NbNの生成条件を明確にするため、放電中のターゲット中間点のプラズマ温度(Tp)と放電電流(Ip)の関係を調べた。NbN薄膜を、【N_2】ガス分圧(【P_(N_2)】)2.4mTorr,【N_2】ガス流量(【Gf_(N_2)】)2.5cc/min,Arガス流量(【Gf_(A_r)】)4.0cc/min,および350mAから600mAまでの種々のIpの条件下で、カーボンファイバー上に形成した。X線解析の結果、B1型NbNが形成されていることがわかった。NbNを周囲に付着したカーボンファイバーの走査電子顕微鏡写真を撮り、その形態を明らかにした。ファイバー軸方向にすじが走っているが、これはファイバー周囲の凹凸溝に沿ってNbNが付着しているためである。作製した試料の超伝導臨界温度(Tc)と、Ipの関係を明らかにした。【P_(N_2)】2.2mTorr,【Gf_(N_2)】2.5cc/minで、Ipが大きくなるにつれてTcが高くなることがわかった。Ip500-600mAの領域では、Tc(中心点)17K,Tc(開始)17K以上のB1型NbN膜が形成された。このTcの値は、カーボンファイバー上形成NbN膜についての最高の値である。また、臨界電流(Ic)の測定も行った。試料作製時のIpが大きいほどIcは大きくなるが、これは高いTcのB1型NbNが形成されることに対応している。臨界電流密度(Jc)の垂直外部磁界(Hex)依存性を温度4.2Kで調べた。例えば、Hex=0でJc=9×【10^4】A/【cm^2】,Hex=10TでJc=4×【10^4】A/【cm^2】である。これはサファイヤ基板上に形成したB1型NbN膜に比べて約1桁小さい値である。この原因は、カーボンファイバー上形成NbN膜の不均質性,部分的クラック等によると考えられる。反応性スパッタリングによるNbN合成の機構を調べた。スパッタリング中のプラズマ状態が異なると、形成される膜の相が異なることがわかった。プラズマ発光スペクトルを測定した結果、B1型NbNを合成するには、プラズマ中に【N(^*_2)】(【N_2】励起子)の存在することが重要であることを明らかにした。
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