研究概要 |
GaAsへのオーミック電極製作において、高濃度層形成のために用いられるドーパントGe原子のGaAs中への拡散と、その加熱処理による変化について、とりわけGe/GaAs界面形成過程初期において、X線光電子回折法を用い結晶学的に調べた。 試料下地基板はn-type GaAs(001)でArイオンスパッタリングとアニーリングにより表面清浄化し、c(8×2)再配列表面を得、その上にGeを蒸着してGe/GaAs界面を製作した。Ge蒸着量は1ML(単原子層)で、(A)下地基板を580℃に加熱中に蒸着した場合,(B)室温で蒸着後580℃で加熱処理した2つの加熱方法を用いた。RHEED観察によると、(A)の表面はC(8×2)+(1×2),(B)のは(2×1)+(1×2)再配列構造であった。 表面・界面の結晶構造の変化を調べるために、Ga・AS・Ge原子の各光電子ピークの極角依存光電子回折パターンを測定した。これにより、加熱処理(A),(B)において、GeのGaAs中への内部拡散が生じていることが明らかにされ、とりわけGe原子は原子間位置やGa位置にではなく、選択的にAs位置をのみ占有していくことを明らかにした。また、X線光電子回折パターンを用い、GaAs中での拡散によるGeの分布の様子が解析できる。Geの分布がガウス型であり、上記で述べたようにGeがAs位置をのみ占有していくとして測定値を解析した結果、拡散係数が〜【10^(-16)】【cm^2】【sec^(-1)】の桁の値であることを求めた。更に、下地基板加熱中にGeの蒸着量を0.3MLから6.6MLまで変えて製作したGe/GaAs界面を系統的に調べた。この蒸着条件下では、Ge原子はいつもAs位置をのみ占有しながらGaAs中へ拡散していることが判明した。 このように本年度はGe/GaAs界面の高温(580℃)での加熱処理によるGeの内部拡散が調べられた。同時に、X線光電子回折法が化合物半導体の界面の解析に極めて有効なことが確認された。
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