研究概要 |
本研究は、新しい発想に立った二元/二元超格子、具体的にはAlAs/GaAs,InAs/GaAsおよびGaSb/GaAs超格子を取り上げ、その結晶学的構造の解析と新しい物性の探求を行なう。三種の超格子はいずれもその平均組成において基板結晶と格子整合するが、それらの混晶状態における原子の混和性が著しく異なるという特徴を持つ。本年度は主としてInAs/GaAs超格子を取り上げその結晶構造解析を中心に行った研究成果を以下に記す。 1.InAsがm分子層、GaAsがn分子層の超格子(InAs)m(GaAs)nを分子線工ピタキシアル法で作製した。mとnの組合せは(m、n)=(B.6,8.2),(6.45,0.51),(8.8,1.2),(2.2,1.2)である。 2.(004)と(115)指数面のX線回折より、いずれの超格子も基板InPと格子定数が異なるが、超格子自ら格子不整合を緩和し、平均格子は立方晶であることが明らかになった。これが、大きい不整合にもかかわらず良好な表面もモホロジーを呈している原因である。3.Ga吸収端およびAs吸収端のEXAFS測定を行なう条件を確立した。4.(m,n)=(6.45,0.51)の超格子におけるEXAFS解析の結果、この超格子においてはGa-As結合長が、2.51【A!°】であり純GaAs中の結合長に比べ2.4%も伸びていることが明らかになった。これは同じ平均組成の混晶In0.93Ga0.07AsにおけるGa-As結合長2.485【A!°】より更に長く、超格子と混晶では結合長が大きく異なることを見出した。一方、In-As結合長はInAs中の結合長と有意の差はなかった。このような結果は、二元/二元超格子の物性に大きく影響している筈であり、従来の平均格子に基いた議論は再考すべきことを指摘している。他の(m,n)組合せの超格子における結合長の解析とその物性との関連については、EXAFS装置の共同利用時間の制約のため、3月中旬現在進行中であり、早急に結果をまとめる予定である。
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