研究概要 |
1.システムの入出力信号が確率過程のとき、その伝達関数はスペクトル推定で求められるが、我々はARMAモデルの係数を適応的に求めるMISを開発している。MISにおいては高速算法によってARMAディジタルラティスフィルタを構成することもできる。昭和61年度は適応的にARMA係数を推定する方法に改良を加え、より高精度の推定器にした。またARMAディジタルラティスフィルタに改良を加え、シストリックアレイとして演算ができ、並列処理が可能となるようなアルゴリズムを開発し、これを専用プロセッサに組み込む方法を検討している。(文献(2),(5)等)。 2.回路網理論をディジタル信号処理に応用することを考え、昭和61年度はダーリントンの回路網合成論をスペクトル推定に応用し、高精度でスペクトル推定すると考えられ、しかもフィルタの構成と特性の近似の性質との関係が明確にわかるディジタルフィルタの構成法を求めた。またそのディジタルフィルタの基本区間を直交行列で表される直交ディジタルフィルタという簡単な回路形式で求めている(文献(3),(6)等)。 3.複素係数ディジタルフィルタは実係数フィルタでは作ることのできない特性を実現したり、係数の素子数を減らせるなどの特徴があり、世界の研究者の関心をひいている。本研究では複素分布定数回路について従来の実係数分布定数回路との違いを明らかにし、その違いが複素量の反射係数に表されるために、複素量の反射係数の性質を明確にした。また新しい複素単位素子を導出し、この複素分布定数回路理論に基づいて、複素ウエーブデジタルフィルタの構成法を求めて、複素ディジタル信号処理へ応用している(文献(1),(4)等。
|