通信規約(プロトコル)を記述する計算機言語として、有限状態オートマトン・モデルに基づくものと、時間順序関係を中心とした記述法(時間論理)に基づく計算機言語とが検討されている。本研究は、後者の時間論理に基づく言語を対象としたものであるが、その言語の効用を評価するために、有限状態オートマトン・モデルに基づく言語についても検討を加えている。 昨年度は研究の第一年次として、両方式の言語の「論理仕様 並びに「言語仕様 の設計を行った。 今年度は昨年の成果を受けて、既存の標準通信規約(プロトコル)に対して、プロトコル・ソフトウェアを両言語により記述する作業を行った。プロトコルとしてはOSI(開放型システム間相互接続)のトランスボート・プロトコルを対象とした。これは本プロトコルが典型的な技術要素を含包していること、時間順序関係に基づく記述を必要とする要素を有すること、プロトコル・ソフトウェアの動的発生・消滅並びにソフトウェア間インタフェース(サービス・エレメント)の記述を必要とするものであること、を選択の理由としている。尚同様にセション・プロトコルについても作業が行われている。 以上の作業に対して、評価検討が行われた。評価の視点としては、プロトコル・ソフトウェア実行時の処理の一意性、言語実行時の処理系への要件とその困難度、言語記述の可視性・了解度等に亘っている。これらの作業は研究分担者が行うとともに、国際標準化検討に参加している諸外国専門家並びに同分野の研究者の協力を得て行われている。 今年度の成果と次年度のコンパイラ並びに処理系の検討に活用してゆくことを予定している。
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