60年度は主として超LSI上で実行される計算の能力を計算量の理論の立場から明らかにした。61年度はこれを発展させ、新しく生じた種々の問題を解明すると共に、超LSIチップ上の回路の正当性を検証するシステムを作成するのが当初の計画であったが、具体的には次のような成果が得られた。 1.ソーティングネットワーク等のいくつかの具体的な問題を効率的に解く回路を構成する際、拡張2部グラフが重要となることはこれまでによく知られている。しかし、拡張グラフを具体的に構成することはむずかしく、これまでに知られているものは無限次元の線形空間上でなされた議論に基づくもの等難解な方法しかない。我々はこれを有限次元空間上の議論に帰着させ、効率のよい拡張グラフを求めることができた。さらに、このグラフを用いて選択問題を効率的に解く回路を構成した。この回路は、これまで知られているものより、深さ及びサイズが大幅に改良されたものである。また、回路の構成法自身も、再帰的な構成によらない単純化されたものである。 2.検証システムに関しては、これまで作成したシステムに大幅な改良を加え、入力記述の方法、システムの処理時間の減少をはかった。更に、大規模な回路を例にとり、種々の回路の記述を試み、大規模故の記述上の問題点を整理した。また、不変式を入力する新しい原理に基づくシステムの作成も検討している。
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