今後のVLSI設計の高度化に向けては、知識ベース型の構成、知識に基づく支援機能が重要であるとの観点から研究を推進した。設計・合成型問題への知識処理の導入に際しては、従来からの解析・検証機能に加え、新たなパターンを(自動的又は半自動的)に合成、生成する機能を必要とする。知識型VLSIパターン設計に向けては幾つかのアプローチがあるが、我々は「機能セル・ライブラリ」をその中心に位置付けて研究開発を行った。機能セル・ライブラリは知識データ構造を有し、外部からの要求に応じうる「頭のいい部品群」を格納するものである。機能ライブラリには、合成時の検証機能、部品選択の支援機能も含む。本研究では、Mead-ConwayのLSI設計手法を基礎とし、NMOSを主対象とする知識型設計のベースとなるOCLSと名付けた機能セル・ライブラリの原型を開発した。パターン記述言語としてはアートワーク的な従来のCIFでは不十分であることから、階層的パターンの記述、パターンの変数化表現、関連知識の埋め込み等の性質を有する記述言語を開発した。これはDPL(MITで開発されたLispベースの言語)の機能を拡張したものであり、Prolog上のオブジェクト指向言語として必要な機能を実現している。マスクレベル設計ルール検証機能も実現されており、上記オブジェクト指向言語により統一的に管理している。OCLSの構文を十分知らないユーザでも使用できるように、グラフィックスを併用する構文指向エディタを開発し、ユーザインタフェースの向上を図った。OCLSでは基本的に部品である必要なセルを選択して大きなパターンを構成していく方法を取る。このセルの選択は現状では人間が行うが、より上位の仕様記述言語から自動的に選択するメカニズムとして、仮説推論に注目し、仮説推論を行う知識ベースの構成について研究し、その上での学習機構を考案した。
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