研究概要 |
離散量を含む最適化問題は、組合せ最適化等と呼ばれ、計算数学,システム工学,オペレーションズリサーチ等の理論的基盤を形成する重要な分野として広く研究が進められている。しかし、最近の計算の複雑さの理論が明らかにしているように、組合せ問題の多くは計算上困難な構造を内包し、原理的に多項式時間のアルゴリズムを持たない。しかも、この種の難しい問題の中には、実用上重要なものが多く、現実の応用の場で、それらを正確に、あるいは,近似的に解くことが要求される。これらの問題を現実的な計算量で解くためには、問題が有しているあらゆる数学構造を可能な限り利用して、計算効率の向上を計らねばならないであろう。その結果、理論的限界を越えることはできないにしても、実用上有用なアルゴリズムを生む可能性はある。 本研究者らは、これまで組合せ最適化問題の表現のための基礎理論の構築から始め、その延長として、動的計画法にもとづくアルゴリズム,分枝限定法にもとづくアルゴリズム,さらに線形および非線形計画のアルゴリズムの基本的枠組の理解を図ると共に、それらの具体的な問題への適用に関する研究を行なってきた。これらのアルゴリズムは、それぞれの問題のもつある構造を利用することで、計算効率の向上を実現するものであるが、利用すべき構造は、共通しているところもあれば異なる部分もある。したがって、いくつかのタイプのアルゴリズムを複合化すれば、問題が有している構造を多面的に利用できよう。本研究は、この目的に、まず動的計画法と分枝限定法の複合化を試み、新しい計算枠組として逐次純化動的計画法(SSDP法)を提案し、その理論的基盤の整備と共に、行商人問題やナップサック問題等への適用を行った。さらに、非線形計画との関連の下に、新しいアルゴリズムの開発や、近似スキームの確立のための検討を行った。
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