X線コンピュータ断層像撮影装置(以下X線CT)は、体内組織をX線吸収係数の分布像として非観血的に、かつ具象的に観察できる装置である。しかしX線CTによって得られる断層像は、体軸に対して直角方向すなわち体の輪切り方向のものである。しかしながら、臨床診断や放射線治療計画には、病変部位や患部組織の立体情報が必要とされることも少なくない。そこで現在は、体軸方向にずらせて撮影した複数枚の断層像を演算装置の中で3次元的に並べ替えることによって3次元構造を得ているが、体軸方向の分解能が劣ることや、同時立体計測ができないことなどの問題点ば存在する。本研究では、対向して置かれたコーンビームX線源と2次元検出器を被検査体回りに360度回転させて計測された数学的には不完全な投影データからフィルタ補正逆投影法により被検査体の3次元的な吸収係数の分布像を算出するアルゴリズムについて検討した。本研究の結果、次のようなフィルタ関数(修正ρフィルタ)が良好な再構成像を得るために有効であることが明かとなった。この修正ρフィルタは以下の2つの成分に分解することができる。(1)X線ビームの斜入射の影響を考慮し、回転軸方向に垂直な成分と平行な成分に分解してそれぞれのぼけを回復する成分。(2)計測された不完全投影データの周波数空間での不完全性に注目し、回転軸方向の周波数を制御し、空間分解能を落とすことによりアーチファクトを大幅に低減することを目的とした場所依存形ローパスフィルタの成分。 本研究ではさらに修正ρフィルタの効果を計算機シュミレーションによって確めた。その結果以下のことを確認した。(1)不完全投影データであってもほぼ正確にCT値の再現が可能である。(2)回転軸方向の分解能を制御することにより、投影データの不完全性によるアーチファクトを大幅に低減することができる。
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