1.双線形可変構造を有する義手制御方法 本研究では、双線形構造を義肢制御のインターフェースに取り入れることを試みた。模擬義手を使った位置・力制御実験では、ステップ入力・連続不規則入力実験とも単なる比例制御方式に比べて、制御成積が大幅に向上することが示され、人間一義肢系の位置・力制御の改良に双線形インタフェースが有効であることを確認した。このような双線形を利用した制御方式は、義手制御以外にもマヒ肢の電気刺激(FES)やマニピュレータの制御などの問題に対しても有効な手段となり得ると考えられる。 2.多チャンネルEMG動作識別法 本研究で堤案した手法は、多次元ARモデルと代表的なパターン識別法の一つである判別関数を組み合わせたものである。多次元ARモデルにより電極間のクロス成分を含む周波数情報が、判別関数によりEMGの振幅パターンが動作識別に利用できる。判別関数は、ARモデルの予測誤差の分散をもとに構成した。手首の掌屈、背屈、回内、回外、手の握り、開きの6動作に対して、4対の電極を肘関節から7cmの前腕部に90°ずつ離して取り付けて採取したEMGをもとに、動作識別実験を行った。識別結果を逐次、制御者にフィードバックしてその学習能力を利用するという条件で、平均96%の識別率を挙げることができた。しかも、識別に必要なEMGは動作発生直後の100msecとすることが可能となった。 運動制御ではインピーダンス調節が鍵となる。本研究で堤案した双線形制御方式をさらに発展させ、より広範囲のパラメータ調節機構を、しかもフィードフォワードにより構成することが、"natural"な義肢制御系を実現する上で重要な課題であろう。
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