研究概要 |
船舶や海洋構造物は海水等の腐食環境中で繰返し荷重を受けるため亀裂の発生ととも伝播に大きく影響する。これらのことを考慮して、本研究では海水を模擬した3%塩水中での鋼(SS41材およびSM50B材)の疲労亀裂伝播に伴う亀裂開閉口挙動ならびに応力繰返し速度と温度の亀裂伝播への影響について、マイクロコンピュータ制御による応力拡大係数(ΔK)一定試験および定荷重試験をおこなって検討した。その結果を要約すると次のようになる。 (1)塩水中における疲労亀裂進展の減速または停滞現象が生じたが、その時に腐食生成物によるくさび効果に起因すると思われる亀裂開閉に荷重の上昇(ΔKeff)の減少がみられた。そのため、ΔKを一定に保ってもda/dNは一定とならず、見かけ上Paris則は成立しない。疲労亀裂伝播にParis則を適用するにはΔKではなく、時々刻々のΔKeffを用いねばならない。 (2)応力比を高くする(SS41材では0.4以上,SM50B材では0.5以上)ことによってΔKeffをΔKとみなしうる。 (3)応力繰返し速度と温度の影響は顕著であり、たとえばSS41材でΔK=24.8MPa【√!m】,f=0.5Hg,T=60℃の条件で、大気中の伝播速度が約7倍も大きくなることが観察された。 (4)繰返し速度と温度との等価性についてはさらに詳しいデータが必要であるが、本研究ではSS41材でΔK=24.8MPa【√!m】の条件で亀裂伝播速度が60℃,5Hgでの場合と30℃でおよそ1Hgでの結果と一致することが予測出来た。
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