浅海における波浪は、一般に非線形性と分散性とがバランスして、たとえばソリトンモードを主体とする構造を形成することがわかってきたので、その一般的表示を求めるため、Stokes波の量子化とkdv方程式によるソリトン解に注目して、量子力学的手法にならって、波浪ソリトン群の統計理論を試みたが、得られた成果は次のように要約される。 1)Stokes波の量子化については、そのHamiltonian表示によるSchr【o!¨】dinger方程式の解を求めて、エネルギー分布を定式化した。また、Kdv方程式についても、ソリトンモードに対して、同様エネルギー分布を求めることができた。 2)非線形不規則波がソリトンを基準モードとするコヒーレントな力学構造を形成しているとの観点から、ソリトンモードによる波浪の統計理論を展開し、力学および統計理論に基づいた波浪ソリトン群の統計理論を試みた。ついで、1つのストームをカバーする現地波浪の観測結果を用いて、かなり広い海象条件下おける波浪ソリトン群の適用性を検討した結果、うねり性の波浪のみならず、発達および最盛期の風波や砕波を含む波浪に対しても、十分この表示が有効であることを示すとともに、その伝播特性も明らかにした。 3)ソリトン群による波形表示の適用性は、Urcell数が10以上のかなり強い非線形性を有する波浪に対して最もよく、とくに砕波を含む波浪に対しても有効であることが示された。 4)海象条件により、波浪ソリトン群の固有値分布には、3つのパターンが存在し、それらは波浪の伝播において保存されることがわかった。また、規準化された波浪ソリトン群のエネルギー分布は、固有値分布と異なり、一定の分布形となり、理論的に求められたエネルギー分布にかなり近いことが示された。
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