嫌気性処理の酸生成段階における硫酸塩還元の役割を解明した。利用した嫌気性流動床ではスキムミルク主体に硫酸塩を加えた基質で馴致した微生物群が反応を行った。炭水化物としてグルコース、ガラクトース、乳糖、キシロースを用いた。この内五単糖であるキシロースは分解されなかった。炭水化物の分解には直接硫酸塩還元反応は関与せず、硫酸塩の存在条件下で酢酸の生成量が増加し他の炭水化物分解産物の乳酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等の生成が少なくなることが確かめられた。つぎに乳酸の分解にはプロピオンが酸菌が活動し硫酸塩還元は関与していないことが確かめられた。プロピオン酸の分解に硫酸塩還元が間接的に関与していると推定され、酢酸の生成が確かめられた。さらにこの硫酸塩還元反応は水素を電子受容体とする独立栄養的反応であることが証明された。炭水化物の分解産物であるエタノールの分解には硫酸塩還元は関与しないでプロピオン酸、酢酸が生成した。タンパク質の分解実験としてポリペプトンを利用した。ポリペプトンで馴致した嫌気性流動床の水理学的滞留時間を60分以上にしてもタンパク質の分解は進行しなかった。この場合上限は75%程度であった。好気性の活性汚泥では95%以上の分解がえられる場合がある。タンパク質のポリペプチド結合を解裂する酵素を有する嫌気性微生物が少ないことが原因である。ポリペプトンの構成アミノ酸を混合した基質(G1u.、Va1.、G1y.、Met.、Leu.、Phe.、Lys.)の分解実験では、それぞれアミノ酸はよく分解して酢酸、プロピオン酸、アンモニアの生成が認められ、硫酸塩の還元はプロピオン酸の分解と酢酸の生成の段階で関与していることがわかった。脂質の分解について研究時間が不足し成果がでていない。しかし炭水化物や有機酸の研究から硫酸塩還元は基本的に有機酸の分解と同じ役割であると考えられる。
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