研究概要 |
本研究では、既往の研究に基づき、耐震設計上重要なはりの曲げ降伏後の接合部の耐力や変形に影響を与える終局時接合部平均せん断応力度、接合部内はり主筋の付着性状、接合部のせん断補強筋の効果に着目して、実大の約1/2スケールの直交ばりと床スラブのない十字型柱・はり接合部8体について、地震時を想定した正負繰り返し加力実験を行った。実験結果から得られた成果をまとめると次の通りとなる。 1.接合部内はり主筋の付着が良い場合には、接合部せん断ひびわれ幅が大きくなり、Γも大きめとなるが、接合部内はり主筋の付着が悪い場合には接合部せん断ひびわれ幅が小さく、Γも小さめとなる。 2.補強筋が少ない(Pw=0.1%)場合、接合部せん断入力量が0.22≦τpu/Fe≦=0.28の範囲ではその大小に関わらず、はりの曲げ降伏後に接合部のせん断変化が顕著となり、層せん断力一層間変位の履歴曲線が逆S字型となり、接合部が破壊した。この場合、付着指標による違いは、あまりみられなかった。また、逆S字化の程度は接合部せん断入力の大きい方がより顕著である。 3.接合部せん断入力量のほぼ同程度の試験体を比べると、はりの曲げ降伏後、Pw=0.1%程度のNo.2,No.4が接合部破壊、半補強程度のNo.5,No.7が接合部未破壊であったことから、補強筋は接合部のせん断変形の増加によるせん断劣化を抑制し、潜在的耐力低下を防止し、破壊モードを変化させる効果がある。 4.補強筋を半補強かつ付着指標の小さい試験体では層せん断力一層間変位の履歴曲線が、エネルギー吸収能率の良い紡錐形になった。
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