本研究は、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)構造におけるフープ筋の効果を定量的に把握しようとしたものである。本研究のSRCは、鉄筋コンクリート(RC)部の主筋による曲げモーメントの伝達を期待しない形式のもので、鉄骨・フープ筋・コンクリートの組み合わせによる複合構造である。以下に示す4シリーズの実験を行った。 (1)8体のSRC試験体を作製し、曲げ実験を行った。実験パラメーターは、鉄骨板要素の幅厚比とフープ筋量である。(2)3体のSRC試験体を作製し、圧縮曲げ実験を行った。実験パラメーターはフープ筋量である。(3)6体のSRC試験体を作製し、一定軸力下で逆対称曲げせん断実験を行った。実験パラメーターはフープ筋量と柱に加える定軸力の大きさである。(4)6体のSRC十字型試験体を作製し、接合部実験を行った。実験パラメーターは、柱軸力、鉄骨とコンクリートの断面比率、フープ筋量である。以上4シリーズの実験を行い、SRC構造におけるフープ筋の効果に関し、次のような知見を得ることができた。 【I】本研究で提唱している鉄骨・フープ筋・コンクリートの組み合わせによるSRC構造の力学的特性は極めて良好である。【II】SRC構造において、フープ筋をある程度配すれば、鉄骨板要素の座屈はほとんど考慮する必要がない。【III】フープ筋は、その拘束効果で、コンクリートの圧縮特性を相当ダクタイルにすることができる。【IV】フープ筋は、SRC柱の耐震性能を向上させるのに極めて有効である。【V】フープ筋を配さなくても、十分な耐力と変形能力を有するSRC柱はり接合部を設計することが可能である。
|