研究概要 |
鋼溶接継手の溶接止端における曲げ疲労き裂の発生・進展に及ぼす板厚の寸法効果の影響を明らかにするために、SM50A鋼板を用いたリブT形すみ肉溶接継手について両振4点曲げ疲労試験を実施した。試験片の主板厚は12,25,38mmの3種類とし、12と25mm厚の試験片は38mm厚鋼板を片面より切削加工しており、リブを溶接する前に加工したものと溶接後加工したもの、2種類とした。得られた主な結果は以下に示す。 (1)疲労強度への影響が大きい溶接止端形状のうち切欠半径Pは板厚が増加するにしたがって小さくなり、応力集中係数は大きくなる。 (2)主板に用いた鋼板素材の疲労試験と疲労き裂進展試験を行い、素材の疲労曲線と応力比が-1から0.5まで適用できるき裂進展速度式を求めた。 (3)溶接止端近傍の溶接線に直角方向の残留応力はリブを溶接する前に主板を切削したものは引張、リブ溶接後切削したものは圧縮となる。 (4)表面き裂の進展性状については、溶接のままのものでは、き裂が溶接線方向と板厚方向へ同時に進展するのに対し、応力除去焼鈍したものでは、溶接線方向へのき裂進展が先行し、その後板厚方向へ進展する。 (5)疲労き裂の発生については、主板厚が大きくなるにしたがって、寿命値は低下する。応力除去焼鈍の寿命値向上への効果はみとめられない。 (6)破壊寿命値は溶接のままのものでは、主板厚が大きくなるにしたがって著しく低下する。応力除去焼鈍したものおよび圧縮残留応力をもつものでは、破壊寿命が延び、板厚の寸法効果の影響がほとんどみとめられない。 以上のように、溶接止端における曲げ疲労き裂の発生・進展には、溶接残留応力の影響が大きく、板厚の寸法効果の影響についても、残留応力の分布ならびに大きさと平均応力とを関連づけて調べる必要がある。
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