昨年度は、測定器の入手が遅れたために、冬季の晴天時の天空放射輝度分布の研究ができただけであった。今年度は年間を通じて、晴天時及び曇天時並びにそれらの中間的な天気のときの天空放射輝度分布の測定ができた。得られたデータを分析研究したところ、晴天時及び曇天時に関しては一応まとまった結論を得ることができた。中間的な天気の時に関しては現象が極めて複雑であり、まとまった結論を得るためにはなお一層の研究が必要である。また、晴天時及び曇天時に関しても、今回得られた結論は、今後更に多くの測定データと比較検討してその妥当性を確認又は改善していくことが重要である。 まず晴天空に関しては、今年度は昨年度には得られなかった冬季以外の天空放射輝度分布の測定も行うことができ、年間を通じてのデータを分析研究したところ、昨年度得られた結論は多少修正されなければならないことが分った。即ち、昨年度得られた天空放射輝度分布の式は大筋においては修正の必要はないが、そこに含まれる反復散乱増加率Kと散乱減衰率Cとの積KCの値は、夏に大きく冬に小さいことが分った。このことは昨年度解明しえなかったことであり、KCの値に関しての修正が必要である。KCの値は、大気中の水蒸気量に影響されるらしく、地上付近の水蒸気圧との間にかなり強い相関関係のあることが分った。 次に青空が全く見えない完全曇天時の天空放射輝度分布は、CIE標準曇天空の輝度分布とほぼ等しい形をしていると見なしてよいことが分った。しかし、天頂放射輝度と全天空日射との関係を理論に検討してみると、天頂と地平付近との放射輝度の差はCIE標準曇天空の輝度差よりも小さくなっていると見なした方がよいようである。
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