天空の放射輝度分布は天気によってその様相が大いに異なる。実用的見地からは、天空を(1)晴天空、(2)曇天空、(3)中間天空の3種に分類し、それぞれに特有な分布を解明するのが適当である。 晴天空の放射輝度分布に関しては、これを物理学的に考察することによってかなり理論的な近似式を導き出すことができる。そのような式としては、永田が以前に昼光の分野で開発した晴天空輝度分布の式に散乱減衰補正係数を乗じた式がかなりすぐれた近似式であることが分かった。しかし、一層すぐれた近似式を望むのであれば、各天空要素の放射輝度を、直射日光の1次散乱によって生ずる成分とそれ以外の原因によって生ずる成分に分けてそれぞれの近似式を求める方がよいようである。よりすぐれた近似式の開発は今後の研究によって果したいと考えている。 曇天空の放射輝度分布は、分布の形としてはCIE標準曇天空の輝度分布と似た形となる。しかし、天頂と地平付近の放射輝度の差は、CIE標準曇天空における輝度比3:1よりは小さく、5:2くらいである。天頂の放射輝度は太陽高度にほぼ比例するとしてよい。 晴天空と曇天空以外のすべての天空が中間天空に分類される。従って、個々の中間天空の放射輝度分布は極めて複雑で殆ど規則性は見られない。しかし、太陽高度がほぼ等しい多くのさまざまな中間天空をひとまとめにして、太陽からの位置関係が等しい天空要素毎に放射輝度を平均したものを見ると、かなりはっきりとした規則性が見られる。実用的な見地からは、このようないわば平均的中間天空を標準化するのが適当である。このようにして見出された中間天空の放射輝度分布はむしろ晴天空のそれに似ているが、分布の傾きは晴天空よりは緩やかである。
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