研究概要 |
大都市圏における身近かな自然としての樹林地等の「緑」に着目し、その開発と保全の相互関係を都市計画関連制度をはじめとする諸制度を媒介項として検討を行ったものである。具体的には、大都市圏の既成市街地周辺部における身近かな、一定規模以上の樹林地等の「緑」について、緑地の保全が開発行為とどのような関係を持っているかを、いくつかの類型に分けて検討を加えた。 今日、既成市街地周辺部の一定規模以上樹林地は、一般に「区画形質の変更を伴わない」という理由で、「開発許可逃れ」による開発の対象となっている。そこで、本研究は、わが国の都市計画制度の一つの柱である開発許可制度の限界がもたらす「開発許可逃れ」の実態について調査検討し、中でも直接的に樹林地開発と関連のある「斜面地開発」について詳細な検討を加えた。さらに開発許可による開発行為において「土地利用計画図」上に「未利用地」として類別され、残された樹林地も、完了公告後は「未利用地」を土地利用上担保する手段がなくなるため、2次開発が行なわれ樹林地が失しなわれる実態を調査検討している。 上述の動向に対して、近年多くの自治体で、身近かな「緑」を保全するため、独自の緑地保全手法,保全システムを検討し、実施に移つしているのでそれらをアンケート,ヒアリング調査を通して調査検討している。大別すると4つのケースに類型化でき、(1)開発の行なわれた後の緑地の保全、(2)開発の際に様々な行政手段を使って行う緑地の保全、(3)開発自体を抑制し、賃貸借契約による緑地の保全、とくに「市民の森」制度、(4)基金による緑地の買取りによる保全、である。最後に上記の緑地保全手法の実効性等を考慮しながら、新しい手法も組み入れて、緑地保全の総合的システムを提案した。
|